株式会社ローリン

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2019.01.16

ビジネス

Webや広告等における受託制作ビジネスの厳しさと甘さについて

受託ビジネスについて

みなさんお仕事お疲れ様です。代表の佐藤です。

この記事を読んでくれているということは、あなたは受託ビジネスに何らかの関わりがあるということですよね。

例えば僕の友人なら直接的には関わっていなくても、友人である僕が受託ビジネスをやってる。

もしくはあなたが直接的に受託をやってる。

あとは受託やってる外注先がある。など。

まあ色んな関わり方があるんですけど、このビジネスモデルってけっこうしんどいことが多いんですよね。

普通に考えたら好きじゃないとやってられない。でも好きなだけでもやってられない。

正直苦しんでる人は割と多いと思うし、苦しんでるまでは行かなくても、経済的に豊かかどうかはちょっと怪しい。

この記事では僕のこれまでの経験から、受託ビジネスの厳しさと甘さについて書いてみたいと思います。

ちなみに最近の新卒やそれに準ずる若い人は、受託系の会社だけでなく事業会社に就職する人も多いでしょうから、対象は30代半ば〜という感じですかね。

あ、なんか有名な代理店勤務の経験があって広告賞とか取ってる人は全然想定読者じゃないので、ご離脱ください。

どっちかっていうと地方の泥臭い仕事であがいてる人が対象ですよ。

受託ビジネスの問題点

弊社は2014年に設立して、いま5期目の半分くらい。

この4.5年の間は総じて楽しめてるんですけど、やっぱりしんどいことも多かったです。

ただ売上は取り敢えず右肩でして、多少の余裕がでてきました。仮に明日から会社の商売がゼロになっても、内部留保的なお話で1年くらいは全員今までどおりに暮らせるかなーというところです。

まあこれが多いか少ないかは置いておいて、以前は全然そんなことなかったですね。

3ヶ月仕事ゼロなら会社畳もうか、という感じでした。

で、この頃はほぼ受託制作しかしてなかったんですよね。

まあ僕の経営能力のなさを突っ込んでも仕方ないので、ここはビジネスモデルのせいにして話を進めていきましょう。

プロダクションは参入障壁が低く価格競争になりがち

まず弊社がそうだったように、プロダクション(制作会社)はメチャクチャ参入障壁が低いですよね。

  • ひとりで始められる
  • シェアオフィスで十分
  • イニシャル20万もあればOK

ていう感じですからねー

プリンターもぶっちゃけいらないと思ってます。セブンのネットプリントで十分。

印刷の色にこだわる仕事を受けたとしたら、単価高いと思うのでそれなりに対策取ればOK。

電話も基本スマホでOKです。固定電話風の番号がほしかったので050plusとか使いました。ほとんど使わなかったけど。

僕は前職を退職してすぐに株式会社を設立したので、登記費用やら税理士さんの顧問料やらかかりましたけど、個人事業主ならそれもいらない。

misocaとFreeeがあれば十分ですよね。多分。(個人事業主の経験がないからわからない)

ということで、そこそこ経験があれば、誰でもライバルになり得る業界なんですよね。

普段友達付き合いしてる業界の仲間が相見積の相手だったりしたことは何度もありましたし、「独立します!」を何度も目にしてきました。

独立しやすい業界は、需要と供給の問題で単価が下落する傾向にあるのは間違いありません。

「WordPressのサイト構築10万円で承ります」

的な業者さんを引き合いに出されたこともありますしね。

そういう状況ですとクライアント側にも情報は当然入るので、「高いよね」って言われることはゼロじゃないです。

こうして水は低きに流れる的にどうしても価格は下る傾向にあると思います。

「外注」=「フロー収入」

もうひとつの理由として

「所詮外注」

となることが挙げられると思います。

発注側から見た外注のメリットって、仕事がないときにお金を払わなくていいことじゃないですか。

内製に比べてコストがかかるとしても、それは一時的なものです。

外注業者とは、何らかの契約をしていない限り基本的にその時だけのお付き合いになることが前提なんです。

これが事業会社の制作部門だったら取り敢えず給料はもらえるし、仕事も何かと発生するでしょう。それを前提とした事業計画を立てるでしょうし。

でも受託を主幹業務としている場合はそうはいきません。常に仕事を取り続けなければいけない「外注」となることは避けられません。

ということは基本的に全てフロー収入となるわけですから、「終わりなき戦い」を続ける必要があるのです。

これ、普通の経営者的に見れば、相当しんどい戦いです。僕はこれが嫌で逃げ出したようなものですからねー。

仕事を納めた分しか収入がない

受託事業を営んでいる場合、何らかの別事業を持っていない限りは、基本的に納品翌月末などに入金があるだけ、となります。

もちろん支払い条件を別途決めている場合は別ですが、大体において納品時で締めるか、着手と納品で締めるかというところではないでしょうか。

まあどちらでも同じなのですが、ここでの問題は「納品しないと入金がない」ということです。

当たり前ですがこれがまたしんどい。

要は手を動かした分だけしか収入がないんです。

これが仮に物販だったら違います。

仕入れコストや事務処理や人件費の増加はあれど、売れた数に応じて利益が増えます。

また有料のWebサービスを運営しているとしたら、同じシステムを使っていても人数が増えた分だけ利益が出ます。(サーバーの増強とかはこの際置いときます。)

要は収穫逓増型のビジネスモデルなわけですね。

ところが受託制作ビジネスは対象的な労働集約型ビジネスとなります。

要は自分(もしくはスタッフ)が手を動かした分だけの収益しか入らないということです。

これは収益を増やそうと思ったら、人を増やすしか無いビジネスモデルです。

雇用を増やすことには大きなリスクを伴いますし、自分が動くだけでは利益の限界があります。

このように、

  • 参入障壁の低さによる価格低下が起こること
  • フロー収入であること
  • 労働集約型であること

が、受託ビジネスの問題だと僕は思っています。

それでは、受託ビジネスを続けるという前提でこれらを打開するにはどうしたらいいのかを考えましょう。

あくまで僕の考えなので異論は大いに認めます!

戦略的に高単価案件を獲得する施策が必要

受託ビジネスで「儲けよう」と思うのは結構無謀だなーと思うのですが、そこそこ利益を出すことはできると思っています。

実際に弊社では設立時から考えると、単価を相当上げました。

勇気を持って単価を上げるとほんとにいいことが多いです。

名古屋で1番大きなWeb制作会社の偉い人と飲んでたときに

「単価上げるの怖かったけど、上げたことが最大の成功要因だったねー」

って言ってたので間違いないです。

で、大事なのは単価の上げ方です。普通怖くてできませんからねー。

対策は実力次第で異なる

僕が思うに、実力がある人は単価上げまくればいいんです。それでも仕事が来ますから。

Webだろうが紙だろうが盛り合わせだろうが、実力があれば相当高くても買い手はいます。

世の中には儲かってる企業さんがちゃんとありますからね。

しかも儲かってる企業さんの普段のビジネスの規模からしたら、Web制作費とか一時的な費用はそれほど大きなものではありません。

実力があればそういった会社さんと直接なり、代理店を通すなりでお付き合いできるはずです。

まあその場合の「実力」って何なの?って話でもありますが、それはケースバイケースなのでなんとも言えません。この場合は制作面の実力と捉えてください。

寝技とかにはあとで触れます。

実力とは、例えばプロジェクトマネジメントだったり、デザインだったり、コードの品質だったりしますかね。

課題解決とか結果にコミットするだとかはちょっと違うレイヤーだと思うので、割愛します。

とにかく優れた実力があれば、自ずと単価は上がっていくと思うんですよね。多分。

ここで問題にしたいのは実力がない場合ですよね。

僕はそっちです苦笑

実力がそこそこでも単価を上げることはできる

僕は制作系の実力はそこそこ、だと思います。

僕という人間は全方位的に60点なので、100点の人が相手だと全然勝負になりません。

こういうタイプです。

レーダーチャート01

でも幸運なことに全方位的に100点な人ってほとんどいないです。また、全方位的に80点のひとは戦場が違うと思ってます。

なのでパラメータの「どこかが100点、あとは20点」みたいな人や、

レーダーチャート03

「こっち方面は80点だけどあとは40点」みたいな人

レーダーチャート02

と戦っていくことになるわけです。

オール60点の僕が戦う相手としては、「80点・40点」の人が、よりしんどいですね。スキルセットがかぶることが多いので。

なので、「100点・20点」の人と手を組めばいいと思ってます。

こうすることでチームとしては「どこかが100点、あとは全部60点」となれるわけですね。

こうして自分の実力以上の価値をつくって、高単価の案件を取りに行けばいいと思います。

ただしこれはさらなる外注関係になるので、利益率は下がります。

また、「100点・20点」の人って良くも悪くも個性的なので、猛獣使いになる覚悟がいります。

そして減った利益率・利益額のバランスと、コミュニケーションコストを見てどういう選択を取っていくかを考えるべきかなと思います。

とは言え、やっぱり僕みたいなオール60点の人は、自分だけでやってると正直いろいろしんどい。どうしても高単価案件を取りに行くのが難しい。

ということで僕のオススメは「虎の威を借る狐」作戦です。ちょっと違うけど。

一度波に乗ればある程度安定する(と思う)

上で書いたのは僕の取った戦い方のひとつであり、他の人には他のひとなりの戦い方があると思います。

ただ何にせよ、一度高単価案件連発の波に乗ると、割といい感じに安定してくるんじゃないかなーと思います。

というのも、高単価案件ってやっぱりブランド力や営業力のない個人事業主・一人親方レベルだと、なかなか直取引って難しいんですよね。

なので代理店と組むことになると思います。

代理店の営業マンはプロダクション的な考え方をしてなくて「いかにスムーズ仕事を進めて利益を出すか」みたいなことが最重要視されていると感じます。

もちろんいい仕事をして継続的に依頼を受けたいということもあると思うんです。でも僕らのそれよりはやはり目の前のお金を見ていると感じることは多いです。

で、そういった代理店営業マンから見て「この人すげー楽だわー」って思ってもらったら、普通に仕事どんどん降ってきます。

こうなったら何らかでミスらない限り、継続的に相談が来るようになります。

もちろん代理店向けの営業力的なものは必要になりますが、直取引を切れ目なく取ってくるのって相当しんどいので、代理店の営業マンと仲良くやれると割といい感じになるとは思います。

もちろん付き合い方とか立ち位置とかは気をつけないと、単純に使い倒されて終わりますので注意が必要ですが。

受託制作で利益を出す施策

ということで、僕なりの「受託制作でいい感じに利益を出す方法」について考えてみました。

とは言えこれは僕の中でも数ある方法の一つでしかありません。

他の方法も含めて、まとめに入っていきたいと思います。

ブランディングがんばる

受託で単価上げるには「ブランディングでがんばる」を考える人は多いですよね。

とても正しいと思います。

ただしハードルが高いなあとも思います。

例えば「ECサイト構築ならA社」というポジション取るのって一朝一夕には無理だし、そもそも既に実力者が上位を占めてることが多いです。

なので、僕はオススメしないです。

でも「地方×スキルセット」ブランディングは誰も手を付けてない領域があったりするので、そこを狙うのはありですねー。

僕が知っている例でいくと、「豊田市×デザイン」のこいけやクリエイトさんとか好例かなと思います。

デザイン会社なんて、ありふれすぎててどうにもならないジャンルなのに、豊田に特化することで突き抜けちゃった感じですよね。

もちろんいままで培った実力がいるのは言うまでもないので、誰にでもできることじゃないです。

でも周りを見渡して「あれ?あそこ空いてるな・・・」って思ったらやってみるのはアリかも知れません。

寝技がんばる

僕はこれと、次に紹介する方法を取り入れてます。

でも、これってもっとうまくやってる人もいますよね。

僕の友人に、ある会社に転職してWebの受託事業をはじめた人がいます。

彼は仕事ゼロの時から「僕は上場企業の仕事しかしない」って宣言してました。(誰だか分かる人はわかると思う)

※許可が取れたら社名と個人名掲載しますが、多分無理だろな。。。

で、この人どこがすごいかっていったらやっぱり寝技なんですよね。

とにかく先方の担当者に気に入られまくる。

もちろん営業力とか提案力とかあるんですけど、仕事抜きでも年上の男性陣に気に入られてる場面をめちゃくちゃ見るので、そういうタイプなんだろうねーと。

ちなみに男性ていうかおっさんですけど、とにかくかわいがられてます。

仕事があまりないときから、これで会社の実績以上の仕事を取ってきてましたね。

上場企業の仕事ってやっぱり「効く」んですよ。他の企業の入りとしては。

なので、この人はそのあとも順調に大きな仕事を掴んできてました。

特にB2Bの上場企業の仕事って入り込んじゃえばそうそう切られないと思うんです。細かい修正は多いだろうし、わかってる業者が楽だし。かつ単価も「低い」ってことはないでしょう。

もちろんある程度の制作力(この場合は会社の)は大前提だけど、こういう方法も全然ありだよね、とは思います。

ちなみに彼はいわゆる制作スキルはゼロに近いです。

制作以外の事業もがんばる

最後に紹介するのは僕が取ったメインの方法です。

僕は

  • めんどくさいけど尖った人と手を組む
  • 寝技(ちょっと)がんばる

に加えて、制作以外の事業づくりをがんばりました。

制作以外の事業で利益を出せるようになると、同時に制作事業もかなり好転します。

まず他事業の利益があることで、制作の単価を下げる必要がなくなります。

要は安い仕事は断ることができるということです。

小さい会社の仕事ほど、工数がかかる割に単価が低いってのはあるあるですよね。

そういう仕事を断ることができるということです。

誤解のないように断っておくと、すぐに儲からなくてもやりたい仕事はあります。でもそればかりではホントにしんどくなる。

なので、そういう「いまは儲からなくてもやりたい仕事」に取り組むためにも、会社に利益があることが重要です。

でも実力が程々の場合、制作で高利益はなかなか難しいし、労働集約なので時間も限られてきてどうしても安い案件は取捨選択せざるを得ない。

これを可能にするのが、他事業での利益なんです。

この「他事業」は労働集約ではないことが望まれます。結局同じことになっちゃいますからね。

それでいて受託ビジネスのスキルを活かせる事業が望ましい。

Web系なら当然ECサイトやメディア運営、WordPressのテーマ販売やASPサービスの運営になるでしょう。

僕は店舗用のスマホアプリサービスや自社メディア、ECサイト運営を営んでます。

これらの利益があるから、受託案件がゼロだったとしても、既にもう困りません。

ただしリスクはどんなことにもあるので、その管理として受託ビジネスも継続しているというわけなんです。

最新の技術とかに触れていくにもいいことですしね。

まとめ

この記事では受託制作ビジネスの厳しさと甘さについて書きました。

厳しさについては主に

  • 参入障壁の低さによる価格低下が起こること
  • フロー収入であること
  • 労働集約型であること

について触れました。

甘さについてはそれほど無いんですけど、実力以上の案件を取ることもできるし、そもそも参入障壁の低さも甘さでしょう。

こういったことを踏まえて、受託ビジネスをいい感じ回していくことができれば、楽しい仕事ですよね。

だって他の会社のことをめちゃくちゃ知ることができますからねー。

「外から見るとこんな感じかな?って思ってたけど、深く知るとこんなことで利益出してるのか」などなど。

結論を言うと、受託ビジネスって厳しいことも多いけど、うまく立ち回ると結構たのしいよね、がんばろうねっていう記事でした。

著者情報

佐藤崇史
佐藤崇史代表取締役
Webの色々を中心に、様々なモノ・コトを使ってお客様のビジネスををサポートしています。特に地方で頑張る中小企業の業績を一緒になって伸ばしていくのに生きがいを感じます。自社Webメディア複数運営。最近はゲーム配信も少々。

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