2019.01.29
ビジネス
当事者が残す名古屋のコワーキングスペース・マイカフェ倒産の備忘録
こんにちは。代表の佐藤です。
この記事の内容は、いつか絶対書いとかなきゃなーと思ってました。別に何かウチの利益につながるわけでもないし、後回しにしてたところはありますが、次に僕とお会いするときの話のネタにでもなれば幸いです。
でも、ふと気がついたらあの事件(と呼んでいいと思う)からすでに1年が経とうとしています。
ほんと早い。もう少し忘れかけてる。
だから絶対に1/31までに書かなきゃ、と思ってキーボードを叩いています。そして一万文字あるので注意です。
ちなみに僕は当時の入居者(会員)であり、債権者(今は放棄)なので、思いっきり当事者だと思っています。
個人的にはかなーり教訓にもなってるので、そのあたりを含めてこの機会に詳しく振り返っていきます。
当時の関係者に取材するわけでもなく僕の記憶で書いていくので、ちょっと違うところがあるかもしれません。
もし気になるところ、間違っているところがあったら、別途連絡ください。調査・検討の上修正します。
事件の概要
名古屋や岐阜・三重・東京・北陸において複数のコワーキングスペースを運営していた「株式会社ファイブフロッグス」が2018年1月31日に突然倒産し、多くの混乱と損害を引き起こした事件。
詐欺的要素も強く、刑事になるのでは?という憶測もあったけど、いまのところ破産手続きを進めている最中の模様(ていうかまだ倒産してない)。
負債総額は14億。個人に向けたものを含めると、下手したら20億くらいになるんじゃないでしょうか。
個人経営に近いいくつかの会社も3,000〜8,000万の債権が未回収のままのはず。普通に連鎖倒産してもおかしくない状況。
ちなみに弊社の被害は売掛3ヶ月分+次のオフィスの入居費用で合計280万程度でした。
マイカフェ(MYCAFE)とは
まずはマイカフェについて振り返っていきましょう。
マイカフェは代表のTが開業したコワーキングスペース。
※この記事、最初は個人名ガン出しで書いてたんですけど、彼には子どももいるし自重します。
はじめは名古屋市・伏見の小さなオフィスビルの1フロアに居を構えていました。
僕はこの「マイカフェ伏見店」時代からちょくちょくゲストとして利用していました。
※後に移転した伏見店は、正確には「伏見本店」
「コミュニティ」と「ビジネス」をウリにしたワークスペースは、僕の記憶では当時名古屋にまだなく、結構話題になったのを覚えています。
開業当初、集客に苦戦していたことは、当時を知る人間なら誰もが知るところ。
しかし代表のTは良くも悪くもパワーがあるので、どんどん人を巻き込んでいきます。
ゴリゴリと集客を重ねた結果、「マイカフェ伏見店」は手狭になり、現在別のコワーキングスペースが入居する場所「マイカフェ伏見本店」に移転することに。
おそらく当時「日本で一番収益化できているコワーキングスペース」と言われていたと思います。
僕はコワーキングスペースって何らか別の「出口」がないと、経営がかなり厳しいと思ってるんですが、当時のマイカフェは単体で収益化できていたはず。
僕がドロップイン利用ではなく会員になったのは、この移転後ですね。
伏見本店への移転から錦通店開店
伏見本店に移転したあと、僕は夕方から利用できる会員になりました。現弊社CTOの森と一緒に、現在も細々と運営しているサービス開発をしてました。
ただしこの頃はまだサラリーマンで、このサービス開発は所属企業の事業として取り組んでいましたのを思い出します。
とにかくこの頃は活気があって
「俺、なんか今までにない働き方してるなー」
って思ってたのを覚えてますね。会社員なのに、別の場所で会社の仕事をしてたわけですから。
こういった場所では、プロジェクトごとに集まったり解散したりを繰り返す。
その当時は「なんて無駄のない働き方なんだろう」って思ってました。今となっては良し悪しだな、と思いますが。
その後Tは、「日本最大級のコワーキングスペース」を標榜する「マイカフェ錦通店」を開店。この店は、なかなかインパクトがあったと思います。
ボールプールがあったり、ブランコがあったり。ジムスペースやBARスペースもあって、楽しかったですね。
僕は森を含む友人と4人で、オープンスペースの4人用テーブルを利用する契約を結びました。
あまりに広すぎてここでも開店当初は集客に苦戦していましたが、徐々に会員が増えていき、かなり活気がある状態まで持っていったところは、Tの凄さだったと思います。
しかしこのあたりから徐々に雲行きが怪しくなっていったのも事実です。
旧伏見店時代からの利用者が離れていき、徐々にネットワークビジネスっぽい利用者が増えていきました。
明らかにマルチ勧誘とかしてましたしね。あれは見てて辛かった。
コミュニティ重視だった旧伏見店・伏見本店の空気感は薄れ「マイカフェの良さ」みたいなものを見失っていった時期ですね。
フランチャイズ化とその後の出店攻勢
その後Tは、マイカフェブランドのフランチャイズ化を進めていきます。
マイカフェの運営ノウハウを他社に提供し、プロデュース料・その他で収益化を狙うというものでした。
ただし、おそらく経営がうまくいった店舗はなかったんじゃないかな?と思います。
あとから見てみると、うまくいってたのは「旧伏見店」と「伏見本店」だけなんですよね。
恐ろしい話です。
さらにこの頃時を同じくして、マイカフェはすごい勢いで直営店を出店していきました。この頃の状況については、「大丈夫なのか?」と思った人も多かったと思います。
僕もその一人ですが、とにかく儲かってるイメージがありましたし、関係性の濃い不動産会社もあったので、うまいスキームを見つけたのかな?と思っていました。
実際、被害者のひとりに
「これ大丈夫なの?何か知ってる?」
って聞いたところ
「大丈夫なスキームを見つけちゃったんだよね〜」
って言ってて、そんなもんなのかなーって思ってました。
しかし実際には全然そんなことはなく、これが直接的な倒産の引き金となっていくわけですね。
倒産とその後
そして2018年2月1日、関係各所に倒産したことが知れ渡ります。
顛末は以下。
- 2018年1月31日、倒産。従業員全員解雇。
- 翌2月1日、固定席や個室を契約していた人が持ち物を持ち帰る
- 有志メンバーによる暫定運営がはじまる
- ビルオーナーと有志メンバーによる経営引き継ぎ交渉がされる
- 結局多数のコワーキングスペースを運営している企業に経営権が譲渡される
- この間に多くの会員が利用を停止する(弊社もこれです)
- 現在も5の体制で運営されている
倒産が知れ渡ったときは、スタッフは泣いてるし、僕らの荷物も誰がどうするかわからないとうことで、結構混乱状態にありました。
その後の有志による暫定運営にも関わってましたが、これはこれで色々悲喜こもごも。僕も含めて色んな思惑が錯綜し、かるーい主導権争いみたいなこともくすぶり始めたり。
最終的にはビルオーナーが混乱を嫌い火消しに動いたことで事なきを得つつ、名乗り出た企業が経営を委託されるという形に落ち着きました。
僕の知人・友人のほとんどが利用を停止し、いまの状況はうかがい知ることはできません。
要は投資詐欺でしょう
さてこの倒産事件、結論から言うと投資詐欺の要素があることは否めないと思います。
刑事となるのかはわかりませんが、あきらかにそういう性格があります。
で、最初に湧く疑問として、
「なんでコワーキングスペースで負債14億???」
ってなりますよね。
実は個人名義のものも含めると20億近いんじゃないかって話もありました。
なので、僕の売掛がどうとかは正直些末な話であり、早々に債権を放棄した原因はこれです。
どうやったって1円たりとも返ってくるはずがないのです。債権150万ですからね苦笑
被害者の会的なミーティングにも出席したんですけど、最大の債権者(11億!)はいなかったものの、みんな数千万〜億なんですよ。被害額が。
「もう、150万でなんだかすみません」
って無意味に謝って、
「いやいや結構大きいでしょー」
って1億の被害の人に慰められる始末。。。笑
とにかく倒産したという事実もそうですが、負債金額に驚きました。
普通にコワーキングスペースを運営しているだけじゃこんな金額になるわけがないのですが、これにはカラクリがあったんですよねー。
おかしくなったのは錦通店オープンから
僕が思うに、明らかにおかしくなったのはやっぱり「錦通店のオープン」なんですよ。
もちろん当時はそんなことわかりませんでした。
「Tさんすげーなー」
って素直に思ってました。
もちろん錦通店がオープンする頃にはかなり仲良くなってたので、どんな経緯でこの大きなスペースを運営することになったのか、お金はどうしたのか、という話は聞いてました。
でも表面的に錦通店はうまくいってたと思うので、「やっぱすごいなー」と。
実は経営的には火の車だったようですが、そんなことは微塵も感じませんでしたね。
しかしこの表面上の成功が、負のスパイラルのはじまりだったのです。
この頃から「Tは変わった」という人が増え始め、古参会員の退会が増えていきます。
T自身も店頭にはほとんど出てこなくなり、コワーキングスペース運営ではなく、不動産事業の側面が強くなっていくのです。
錦通店オープンで何がおかしくなったのか
さてこの錦通店、500坪近い敷地にレンタルオフィスとコワーキングスペースを併設した、当時圧倒的な規模感を誇るオフィススペースでした。
現在でこそ名古屋にもリージャス系列のそういった大規模スペースがありますが、当時は渋谷ヒカリエにあるMOVくらいしかなかったように思います。
この巨大スペースに小資本のコワーキングスペース運営会社が入居するなんて、まあ相当しんどい話です。
弊社の現在のオフィスが同地区なのでわかるのですが、坪単価の相場は10,000円程度かな、というところです。
古いビルだし、大口契約ということで坪単価をそこそこ安めに抑えてたとしても、400万/月ちかくは支払ってたんじゃないかと思います。
これに加えて莫大な改装費用と、スタッフの人件費、さらにはバカにならない光熱費やその他ランニング・コスト。
これをコワーキングスペースの業態で賄っていくのは相当しんどいはずです。
コワーキングスペースの客単価って、多分ひとり5000〜7000円程度だと思うんですよね。
個室オフィス利用(レンタルオフィス)の方が単価は上がりますが、その分一社あたりの人数で割る必要がありますし。
となると人件費や利回りを考えると、700〜800人の利用者が必要になるわけで。名古屋でそれは結構難しいですよね。
じゃあどうやって経営を成り立たせていたんだ、という話になります。
そもそも資金計画が杜撰だった可能性が高い
まず錦通店の開店にあたっては、億単位の融資がされていたはずです。T本人談なのでなんとも言えませんが、負債総額から見ても間違いないかと。
で、それをビルの賃料で返済していく設定になっていたはずです。
当然、利益が出ていなければどんどんその資金が減っていくことになります。
まずこの目論見が非常に甘かったのではないかということですね。
そもそも伏見本店は継続しながら、新たに錦通店をつくるわけですから、当然カニバリます。
僕らもそうですが、伏見本店からの移転組も少なくなかったですからね。
名古屋は東京にくらべれば全然、スタートアップの土壌とか育ってないと思うし、製造業の街なのでフリーランスでガッツリ仕事する!っていう人が少ないですし。
当然「開店から赤字に次ぐ赤字」となっていきます。
※これ弁護士がどこかで言ってたんですけどソースがないです
赤字でも運営するために
赤字を垂れ流し続けていたマイカフェ。
それでも15年12月に錦通店が開店してから倒産するまでほぼ3年間運営していきます。
この資金繰りをどうしたのでしょうか。
これが14億の負債の大部分を占めるものとなるのです。
要は、錦通店を開店した際に融資した不動産会社が、さらなる融資をしたんですね。
開店後しばらくすると、錦通店は表面上かなり賑わってきました。これに騙された可能性が高い。騙すつもりはなかったとしても。
マイカフェも、実は儲かってないのに融資を受けた手持ち資金から家賃支払いを続けていきました。
決算書を見ればわかるはずなのに、融資側からすると儲かってると思ってしまっていたようです。
ひょっとしたら決算書自体も粉飾していたのかもしれません。そうでなければ常識で考えて融資しないでしょう、と思いますし。
これが連続出店の真相です。
- 不動産会社は持て余した持ちビルがいくつかあった。
- マイカフェはビルの再生を謳い、資金を預かって改装を繰り返した
僕が把握しているだけでもこのスキームで8つのオフィス(と店舗)を直営していました。
こうして融資を積み重ねることで運転資金を捻出していたということですね。
ただし問題点がひとつ。
これらのビル、まったくと言っていいほど集客できていなかったんです。
僕にはこの「集客できてないのに出店を続ける」スキームが全然わからなかったので、先に書いた
実際、被害者のひとりに
「これ大丈夫なの?知ってる?」
って聞いたところ
「大丈夫なスキームを見つけちゃったんだよね〜」
って言ってて、そんなもんなのかなーって思ってました。
ってなってたわけですねー。
事業はそっちのけで資金繰りしかできなくなった
こうなってくると、融資・投資が止まったら資金繰りも滞り、すぐに倒産します。
仮に1店舗あたり平均300万の家賃がかかるとしたら、それだけで毎月2400万出ていきます。
これに人件費がかかりますし、各店舗の内装を見ればわかるように、受けた融資の何割かは初期の改装費として消えます。
この流れが止まったのが、2017年12月だった、ということでしょう。
要するに手持ち資金が底をついたということですね。
そして翌月末で解散の流れです。
弊社の場合、
- 2017年11月締の売掛の支払い遅延 12月末支払 → 1月末に
- 当然12月締分も1月末支払。
- 1月分の仕事もしていて、それは2月末支払
これら11月・12月・1月分の売掛すべて未回収となりました。
出店した直営店舗について
ここからは思い出せる限り、僕が把握できている限りの、出店した直営店舗の状況を書いていきます。
マイカフェ伏見店(旧伏見店)
これが最初の出店となります。Tは信金で融資を受けて開業しました。
開業当初は苦戦したものの、徐々に人気となり手狭になっていきました。
マイカフェ伏見本店
旧伏見店が移転して、より広いスペースに生まれ変わりました。ここではその後大きく発展を遂げる企業も入り、かなり賑わっていました。
この時期が最盛期だったと思います。Tもだいたい店頭にいたように思います。
マイカフェ名駅店
ここは僕はよく知らないんですけど、笹島交差点近くにあった小さめの店舗です。
旧伏見店と同じような規模だったと記憶しています。
その後名駅エリアの地価高騰もあって、更新時をもって閉店となったと記憶しています。
※関係者に確認したところ更新によってというより、あとから触れる名古屋駅前店の開店に伴っての閉店だったようです。
マイカフェ錦通店
伏見本店での成功を元に、不動産会社から融資を受け、さらにその不動産会社の持ちビルの1フロアを使って開店したのがこの店舗。
例のスキームの第一号です。
始めの半年は伏見本店とのカニバリもあって、閑古鳥が鳴いてましたが、Tが直接仲のいい企業2社を、格安の条件で誘致して賑わいを作り出します。そこから一気に好転していきました(財務面はそうでもなかったようですが)。
この頃、Tがバリっとしたスーツを来て、視察に来たビジネスマンを案内していたのが印象的ですね。
当時世界最大級を謳っていて、まあそこに偽りはなかったかな。
僕は途中で飽きてきちゃいましたが、ホントに良いスペースだったと思います。
マイカフェクラシック
例のスキーム第二号ですね。
コンセプトは、なんだっけな。列車的なものをモチーフとしてました。
もともとTは妄想で暴走するタイプだとは思うんだけど、それがスパークしちゃったのがここですね。
多分めっちゃイニシャルかかってると思います。
ここなんて開店当初から「集客する気あるの?」って感じでしたから、ここから「例のスキーム」で手元に大きなお金がある状態に毒されていった可能性が高いです。
僕はマイカフェ好きだったんで、集客の提案結構してたんですよね。
結局全然取り入れてもらえなかったけど。
マイカフェ名古屋駅前店
例のスキーム三号店。
もう全然集客する気無いんじゃないかという疑念がこの頃からふつふつと湧いてました。
立地はイマイチだったけど、嫌いな感じじゃなかったですね。。。
※関係者に聞いたところ、そもそも全席・全部屋稼働しても赤字の料金設定だったようです。
ママカフェ
「自立して働きたいお母さん」が対象、みたいなスペース。
ここもめっちゃイニシャルかかってると思います。子供向けの遊具とかガッツリ入ってました。
ここでかわいそうなのは、巻き込まれ事故をした人が複数いたこと。
そもそも立地も「雁道」ってところで相当厳しいし、例のスキーム以外の何者でもないですね。4号店です。
ちなみに巻き込まれ事故の当事者は、契約書がめちゃくちゃ杜撰だったことから事なきを得ました。
倒産後の処理で色々契約書などを見る機会があったんだけど、そもそも押印してないし、日付も名前も入ってなかったですよ。
何なんだこれ、レベル。
マイカフェ丸の内店
例のスキーム5号店。
ブラジル領事館の入ったすごく立派なビルです。オフィス自体もわるくないんですけど、やはり集客する気が無かったんだと思います。
ちなみに現在は別の企業が運営していますが、この企業のオーナーも被害者の一人。
例のスキームで運営するはずのものを資金繰りのために運営権を渡して丸投げ、という感じだったかと。
マイカフェアネックス
例のスキーム6号店。いくつあるんだ笑
そろそろTもネタ切れになってきてて意欲もなし。スタッフに丸投げでコワーキングは一切なし。完全にレンタルオフィスで、ここは受付業務もなしです。
そもそも集客するつもりがないので、おそらく全然入居者がいない状態でしたね。
最終的に1社入ったとかどうとか言ってましたが、その後どうなったのかはわかりません。
大須マルシェ
ここはオフィススペースではなくて、商業用のテナントスペースでした。
いくつか入居してましたが、その後どうなったんだろう。今度見に行ってみよう。
もちろん例のスキーム7号店です。
熱田ガルニエ
ここについては全然しらないので何も書けませんが、肉フェスとかやってた気がします。
よくわからない。
例のスキーム8号店です(順不同)。
その他の店舗
その他にもフランチャイズ店舗として
- マイカフェ金沢店
- マイガレージ
- MG四日市
- MG岐阜
- MG豊田
- MG新宿
の出店と運営に携わっていました。
また、プロデュース店舗として
- DIVISION
- NAYUTA Bld.
にも携わっていました。
これらの店舗は基本的に別資本での運営でしたが、一部は採算が取れず、結局マイカフェ側が巻き取るという状況だった模様。
マイカフェの収益構造について
このように、マイカフェの後半は「例のスキーム」で資金繰りをしていただけの、正直実態がないと言われてもしかたのない状態でした。
弊社も含めて、一時的には利益をもらっていても最終的には売掛を回収できずトータルで見たら赤字という企業と、融資や投資を受けたものの回収できなかった企業がたくさんあったわけです。
先程も書いたようにマイカフェのスキームは
- 旧伏見・伏見本店の営業実績をつくる
- 1を活かして融資を受け、錦通店をつくる
- 大規模店舗の錦通店は実質赤字だが賑わいをつくる
- 3をブランド化してさらなる投資を促す
- 店舗運営は赤字続きだったが、4で資金繰りを回す
というものですね。
Tが派手に遊んでいたのをご存知のかたも多いと思いますし、僕も一緒に遊んだことが何度も何度もあります。
ニューハーフのあの店とか、住吉にあるあの店とか。ね。
でもその全てはハリボテだったと言われてもしかたない状態だったのです。
だって本体である店舗運営・シェアオフィス運営で利益を出せてなかったわけですから。
ギャンブルに負けたということ
あなたは「だろう運転」と「かもしれない運転」ってご存知ですか?
僕は結構「かもしれない運転派」です。
「だろう運転」とは、自動車の運転時に
「歩行者なんて出てこないだろう」
「あの右折待ちの車、動かないだろう」
というメンタルで運転することですね。
一方の「かもしれない運転」とは
「あの影から歩行者が出てくるかもしれない」
「あの右折待ちの車、動くかもしれない」
というメンタルのこと。
どっちが事故率高いかは明白ですよね。「だろう運転」はギャンブル的要素が強すぎる。
リスクをどう見るかっていう話なんですけど、やっぱりリスクからは目をそらさず、しっかりと向き合うべきなんですよね。
Tは結局の所、この「だろう運転」ギャンブルに負けたんだと思います。
リスクを見ぬふりをして「えいや」で走り出してしまった。
その結果多くの社員を泣かせ、仲の良かった取引先に大きな損失を与え、(どういう処理をしたのかは不明だけれど)家族にも迷惑をかけた。
Tは何度か僕に「僕はレバレッジかけるほうなんで」って言ってました。
「ガンガンいきましょうよ!」とも。
でも僕は「かもしれない」派なので大きな動きはしなかった。
またあるときは、
「佐藤さんの会社に出資したいんですけど」
と言われたこともありました。
その時は儲かってるイメージがあったし、ウチの会社も全然余裕がなかったので1割くらい気持ち持ってかれました。
でも、そんなうまい話なんてあるわけないんですよね。
選択することで起こり得るリスクとしっかり向き合う。
Tはこれを怠った事で、決して止まらない濁流に飲まれちゃったんだなと思います。
この事件から得られる教訓
「経営はギャンブルじゃないから」
「シートベルト締めて法定速度守ってたらそうそう事故らないよ」
「失敗しても笑うだけだから」
「リスクテイクしろよ」
これ、全部同じ友人に言われたことです。
彼は同じ中学の同級生で、東京で会社経営をしていて、いまやあるジャンルで圧倒的な結果を残しています。
中学のときは僕が4番でピッチャー、彼は補欠だったんだけど、いまや向こうがメジャー級ですよ。がんばります。うす。
それは置いといて、経営の先輩からの助言で、いまでも胸に刻んでることです。そしていままでで一番役に立ってると思う。
この一見相反する言葉からどれだけのことを学んだか。
僕はこれらの言葉を
「取れるリスクは最大限取れ、でも取れないリスクは絶対に取るな」
って解釈しています。
やっぱり経営(っていうか人生も)はリスクを取らないと何も得られないなと思う。
費やすのはお金だけじゃないです。時間や人間関係も含めて、いろんなリソースを使ってリスクを取っていかないと、得られるものが小さくなってしまう。
でもやっぱりギャンブルはしちゃいけない。丁半博打に身を委ねてはいけない。
「この勝負に負けたとしてもリカバリーはこう」と思っていればそれは「取ったリスク」と言えると思うんです。
でも
「ダイジョブでしょー!」
「なんとかなるでしょー!」
っていうのはただのギャンブルだと思う。
これじゃいつか事故るよね。
自分だけの人生ならギャンブルもありだと思うけど、多くのビジネスは自分だけじゃ成り立たないわけで、そこでギャンブルはNG。
社員や取引先がある以上、経営者には常に厳しい判断が求められると思う。
やっぱり地に足つけつつ、取れる限りのリスクを取っていくことの大切さが、マイカフェの件で学んだことのすべてだと言ってもいいと思う。
余談
この事件が起きた直後に「社長失格」っていう本を読みました。
そしていままた読み返しています。
板倉雄一郎さんという人が日本のネット業界の黎明期に天国と地獄を味わった実話で、めちゃくちゃおもしろいのでおすすめです。
この本を読んでても思うんだけど、多数の人の思惑が複雑に絡み合う企業経営は、「一度走り出したら止まれない」部分が少なからずあると思う。
そこにはもちろん自分のプライドとかもあったり。
だから引くに引けない状況になることもあるし、そうなったら冷静な判断もできなくなることが想像できる。
この本を読んでて、Tの気持ちのほんの一部を想像できました。
失った売掛についてはもう「なかったもの」にしているし、オフィスの移転もかなりポジティブに捉えてるのは事実だけど、自分にも起こり得ることだとは心に刻んでおきたい。
あの事件から1年後に、改めてそう思いました。
余談の余談
「社長失格」と合わせて読みたいのは、こちら。アフィリンクじゃないよ。
どちらも今日現在、キンドル・アンリミテッドで無料で読めますね。
サクッと読めるのでやっつけちゃいましょう。
余談の余談その2
真偽の程は定かはありませんが、最大の債権者である不動産会社によると、3年間ほとんど家賃支払われてないって言ってました。
また、一部店舗は100%稼働しても不採算の料金設定。
しかしそれが本当だとしたら、11億のうちの多くはどこいったんだ。謎は深まりますね。。。
実はもう少し裏があるんじゃないかな?って思ってますが、僕には知りようもありません。
著者情報
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Webの色々を中心に、様々なモノ・コトを使ってお客様のビジネスををサポートしています。特に地方で頑張る中小企業の業績を一緒になって伸ばしていくのに生きがいを感じます。自社Webメディア複数運営。最近はゲーム配信も少々。
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